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平成30年度改正の特許法等の施行日を整理します(2019年6月19日更新)

1. TPP関連以外

TPP関連以外の改正法として「不正競争防止法等の一部を改正する法律」があります。この改正法の施行日は原則として令和元年(平成31年、2019年)7月1日です。

この改正法には産業財産権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)の法改正も含まれているので、基本的にはこれらの改正法も令和元年7月1日から施行されることになります。

令和元年の論文式試験は6月30日に実施され、「弁理士試験が実施される日に施行されている特許法等に関して出題する。」としていますので、この法改正は口述試験から影響することとなります。

しかし、既に新規性喪失の例外の改正法が施行されているように、例外的に令和元年7月1日以外の日から施行される規定があります。この例外の中で弁理士試験に影響がありそうなところを以下に挙げます。

1-1. 平成30年6月9日から施行されているもの

1-1-1. 新規性喪失の例外期間(特許、実用新案、意匠)

新規性喪失の適用期間を公表から「1年」とした改正法の施行日は「公布の日から起算して10日を経過した日」とされており、公布の日は平成30年5月30日でしたので、平成30年6月9日に施行されています。

したがって、令和元年の弁理士試験では短答式試験から出題されるものとして学習しておく必要があります。

1-1-2. 商標登録出願の分割の要件追加

商標登録出願の分割の要件として出願手数料を支払っていることを追加した改正法は、新規性喪失の例外と同様に平成30年6月9日に施行されています。

したがって、令和元年の弁理士試験では短答式試験から出題されるものとして学習しておく必要があります。

1-2. 平成30年11月29日から施行されているもの

1-2-1. 不正競争防止法第2条第1項第11号、12号の改正

不正競争防止法第2条第1項第11号、12号(技術的制限手段の効果を妨げる装置等の譲渡等)の改正の施行日は、「公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、この施行期日を平成30年11月29日とする政令が閣議決定されています。したがって、この改正法は平成31年度の弁理士試験の出題範囲となります。

令和元年7月1日の施行日を迎えると、他の規定の改正の影響により、不正競争防止法第2条第1項第11号は「17号」に、12号は「18号」にスライドしますが、それまでは11号、12号のままとなります。

1-2-2. 不正競争防止法第2条第7項の改正

 不正競争防止法第2条第7項(技術的制限手段の定義)の改正の施行日は、2条1項11号、12号と同様に、平成30年11月29日です。したがって、令和元年の弁理士試験の出題範囲となります。

ただし、「(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)」を削る改正と、不正競争防止法第2条第7項を8項にスライドさせる改正については、令和元年7月1日に施行となります。したがって、平成31年度の弁理士試験の短答式試験が例年通りの日程で行われれば、試験当日に施行されている法律の条文は以下の通りになります。

この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

 

1-2-3. 不正競争防止法第19条第1項第8号の改正

 不正競争防止法第19条第1項第8号(2条1項11号、12号に関する適用除外)の改正の施行日は、2条1項11号、12号と同様に、平成30年11月29日です。したがって、令和元年の弁理士試験の出題範囲となります。

ただし、同規定中、2条1項11号、12号を示す部分を改正後の2条1項17号、18号とする改正、及び、19条1項8号を19条1項9号にスライドする改正については、令和元年7月1日に施行となります。したがって、令和元年の弁理士試験の短答式試験が例年通りの日程で行われれば、試験当日の条文は以下の通りになります。

 第二条第一項第十一号及び第十二号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第十一号及び第十二号に規定する装置、これの号に規定するプログラム若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し若しくは当該プログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為又は技術的制限手段の試験又は研究のために行われるこれらの号に規定する役務を提供する行為

 1-3. 平成31年4月1日から施行されるもの

  特許法107条3項(特許料)、109条の2(特許料の減免又は猶予)、112条1項及び6項(特許料の追納)、195条6項(手数料)、195条の2の2(出願審査の請求の手数料の減免)の規定は、平成31年4月1日から施行されます。新規性喪失の例外を除いて、今回の特許法の改正のメインとなる手数料に関する規定がここに含まれています。弁理士試験においては平成31年度の短答式試験から出題ということになります。 

1-4. 令和2年1月1日から施行されるもの

  意匠法15条1項(特許法の準用)、60条の10(パリ条約等による優先権主張の手続の特例)については、令和2年1月1日に施行されます。令和2年の短答式試験から影響することになります。

2.TPPの締結に伴う改正

「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」において予定されていた特許法、商標法の改正については、一部を除いて、TPP11協定が日本国について効力を生ずる日から施行されています。

TPP11協定は,同協定の署名国(11カ国)のうち6カ国が国内法上の手続を完了したことを寄託者(ニュージーランド)に通報してから60日後に効力を生ずることとしていました(TPP11協定第3条)。

6カ国目の通報があったのは平成30年10月31日であり、TPPの締結に伴う改正は平成30年12月30日から施行されています。弁理士試験においては令和元年の短答式試験から出題されます。

3.マドリッド協定議定書の共通規則の改正

マドリッド協定議定書の共通規則の第27規則の2、第27規則の3、第40規則(6)等の改正が2019年2月1日に発効されています。

 

4. 弁理士試験用まとめ

4-1. 特許法・実用新案法

 今回の改正のメインとなる新規性喪失の例外(特許法第30条)と手数料に関する規定(特許法第109条の2、195条の2の2等)、TPP関連の改正(特許法第67条~67条の8、125条の2等)は令和元年の短答式試験から出題されるものとして学習する必要があります。

 その他の改正、つまり、書類の提出等(特許法第105条)と証明等の請求(特許法第186条)については令和元年の口述試験から出題されるものとして学習するのが良いと思います。

4-2. 意匠法

 新規性喪失の例外(意匠法第4条)については短答式試験から出題されるものとして学習する必要があります。

 意匠法15条1項(特許法の準用)、60条の10(パリ条約等による優先権主張の手続の特例)の改正については、令和2年の短答式試験から出題あれます。

 それ以外の改正、つまり、63条(証明等の請求)は口述の試験対策として学習するのが良いと思います。

4-3. 商標法

 商標登録出願の分割に関する改正(商標法第10条)、TPP関連の改正(商標法第38条等)は令和元年の短答式試験から出題されるものとして学習する必要があります。

 それ以外の改正、つまり、証明等の請求(商標法第72条)は口述の試験対策として学習するのが良いと思います。

4-4. 不正競争防止法

 技術的制限手段に関する改正(不正競争防止法2条1項11号、12号、同条7項、19条1項18号)は、短答式試験で出題されるものとして学習する必要があります。

 それ以外の改正は令和元年の弁理士試験(短答式試験)では出題されない可能性が高いです。

 なお、著作権法については、下記リンク先の記事をご覧下さい。

4-5.マドリッド協定議定書

 マドリッド協定議定書の共通規則の改正は令和元年の弁理士試験から出題されるものとして学習する必要があります。

 

 平成30年度改正と令和元年度改正をまとめた今後施行される改正法については、下のリンク先をご覧下さい。

inoue-patent.com

 

www.jpo.go.jp

 

ryuuji11itou16.hatenablog.com

 

www.jpo.go.jp

 

www.meti.go.jp

 

www.jpo.go.jp

 

www.meti.go.jp


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