ふかきあきじ

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【欧州特許庁(EPO)】独立クレームと従属クレームの間の単一性

欧州特許庁(EPO)での特許出願の審査について、「独立クレームとそれに従属するクレームの間では単一性は判断されない」と言われることがあります。

この表現においては、複数の従属クレームが存在する場合、「①独立クレームとそれに従属する任意の1つの従属クレームの間では単一性が判断されない(つまり、従属クレームの間では単一性が判断される)」のか、それとも、「②独立クレームとそれに従属する一連のクレームの間で単一性が一切判断されない(つまり、独立クレームと従属クレームの間でも、従属クレームの間でも単一性が判断されない)」のか明確ではないので、調べてみました。

 

EPOの審査ガイドライン

欧州特許庁の審査ガイドラインのPart F Chapter Vには以下のようにあります。

Part F – The European Patent Application
Chapter V – Unity of invention

No objection on account of lack of unity is justified in respect of a dependent claim and the claim on which it depends (see F-V, 2.1).

If, however, the independent claim appears not to be patentable, then the question whether there is still an inventive link between all the claims dependent on that claim needs to be carefully considered (see F‑V, 4.2).

これによると、独立クレームとそれに従属する任意の1つのクレームとの間では単一性欠如の拒絶とする必要はないものの、独立クレームに特許性(新規性、進歩性)が無い場合は、その独立クレームに従属するクレームの間で単一性の判断が行われます。

 

例えば、

独立クレーム1に従属するクレーム2および3がある場合、独立クレーム1に特許性がなければ、従属クレーム2と3の間では単一性の判断が行われます。この場合、独立クレーム1には特許性がないので、独立クレーム1を残すことを前提として、独立クレーム1と従属クレーム2、独立クレーム1と従属クレーム3の間の単一性を判断する意義はありません。しかし、従属クレーム2、3には特許性があるかもしれないので、従属クレーム2と3の間で単一性の判断を行う意義はあります。

一方、独立クレーム1に特許性がある場合、独立クレーム1とそれに従属するクレーム2及び3は、いずれも独立クレーム1に記載の特別な技術的特徴(新規性・進歩性のある特徴)を有することから、クレーム1から3は単一性があるということになり、単一性を判断する必要はありません。

 

結論

冒頭の「独立クレームとそれに従属するクレームの間では単一性は判断されない」というのは、独立クレームに特許性がない場合は「①独立クレームとそれに従属する任意の1つの従属クレームの間では単一性が判断されない(つまり、従属クレームの間では単一性が判断される)」という意味で、独立クレームに特許性がある場合は「②独立クレームとそれに従属する一連のクレームの間で単一性が一切判断されない(つまり、独立クレームと従属クレームの間でも、従属クレームの間でも単一性が判断されない)」という意味なのかなと思いました。

いずれにしても独立クレームとそれに従属する任意の1つの従属クレームの間で単一性が判断されることはなさそうです。