ふかきあきじ

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建築の意匠が意匠登録の対象に

特許庁は2020年春から建築の外観と内装の意匠(デザイン)の登録を認めるよう意匠法の改正を目指しているとのことです。建設会社出身の弁理士としては気になるところなので、整理しておきます。

現在の著作権法による建築の意匠の保護

著作権法では建築の著作物(著作権法第10条第1項第5号)を認めていますが、凱旋門や宮殿のような「建築芸術」と呼べるものでなければ、建築の著作物には当たらないと解釈されています。また、建築の著作物に該当したとしても、著作権の効力は厳しく制限されています(著作権法第46条等)。建築物は、絵画や音楽などとは異なり、実用的なものであって、風景の一部になるものであるためです。

なお、図面が著作権で保護される場合がありますが、これは図形の著作物(著作権法第10条第1項第6号)として保護されるのであり、必ずしもその図面により表される建築の著作物まで保護されるものではありません。

現在の不正競争防止法による建築の意匠の保護

建築の意匠が「商品等表示」として需要者の間に広く認識されている場合には不正競争防止法により保護される可能性があります。「商品等表示」というのは、自己の商品・サービスと他社の商品・サービスとを識別するための表示を意味し、例えば、商標(トレードマーク)があります。建築の意匠が商標のような役割を果たす場合には、不正競争防止法により保護される可能性があるということです。

ただし、不正競争防止法においては、建築の意匠が需要者の間に広く認識されるまでの間は保護されず、また、需要者の間で広く認識されるまでに至る建築の意匠はごく一部と考えられます。

現在の意匠法

意匠法第2条第1項は、「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」としています。

この「物品」の解釈として、原則として動産である必要があり、不動産の意匠は意匠登録を受けることができないとされています。

ただし、例えば、門、組立バンガローのように、工場で製造したものを設置場所に運搬して組み立てるだけのものは意匠登録の対象になるとされています。微妙なのはプレハブ化が進んだ住宅やアパートなどですが、これらは「組立家屋」として意匠登録の対象とされています。

また、タイルやカーテンウォールのような部材単位であれば、現在でも意匠登録を受けることができます。

新たに登録になる建築の意匠

上記の点を考慮すると、新たに登録を認める建築の意匠は、現場で作り上げる1点物の建築の外観と内装ということになりそうです。

とはいえ、意匠法は、実際に物品が製造される前のアイデアの段階で意匠登録を認めていますので、建築の意匠についても、意匠設計の段階であっても登録を認めることになると思います。

意匠登録の手続

意匠登録を受けるためには、特許庁に対して意匠登録出願という手続を行い、登録を受けられるか否かの審査を受ける必要があります。審査を通過したもののみが意匠登録を受けることができます。

意匠登録出願において、意匠は、図面、写真、ひな形、見本のいずれかにより表現することとなっていますが(意匠法第6条)、建築の意匠は図面か写真により表現することになると思います。

意匠登録の要件

特許庁では、主に、意匠が新しいものか(新規性)、意匠が容易に創作できたものでないか(創作非容易性)、同一又は類似の意匠が先に出願されていないか(先願主義)といった要件を満たすか審査されます。

意匠登録を受けるためには、意匠を独自に創作し、意匠の内容を守秘義務のない者に知らせないようにして、なるべく早く意匠登録出願を行うことがポイントになります。

2020年春までに注意すべき点

意匠法が改正される2020年春までに創作した意匠については、意匠の内容を守秘義務のない者に知らせないようにし、どうしても知らせる必要がある場合には、秘密保持契約を結ぶ必要があります。

2020年春までに建築物が竣工してしまう場合など、秘密保持契約ではどうしようもない場合もありますが、その場合は、意匠の新規喪失の例外の適用を受けることが考えられます。新規性喪失の例外は、意匠が守秘義務のない者に知られる等してから1年以内に意匠登録出願をした場合に例外的に登録を認める制度です。

したがって、現在創作している意匠について登録を目指すのであれば、少なくとも2019年春までは秘密状態を保つよう注意する必要があります。

意匠登録を受けるメリット

意匠登録を受けることで、他者による模倣を防ぐことができ、また、他者に意匠登録を受けられてしまい、その意匠を利用できなくなるのを防ぐことができます。意匠法においては、たまたま同じような意匠を創作した者が複数いる場合でも、最も早く意匠登録出願をして登録を受けた者がその意匠を独占的に利用できることとなります。

意匠登録の効果は、登録を受けた意匠と同一の意匠だけでなく、登録を受けた意匠と類似する意匠にも及びます。

 意匠登録に要する期間と費用

意匠登録出願から登録を受けるまでの期間の目安は半年から1年ほどです。

意匠登録出願を弁理士に依頼した場合、登録までの費用の目安としては1つの意匠について20~40万円が目安となります。

意匠登録は登録から20年間(ここも25年間に改正されるかもしれません)持ち続けることができます。登録を維持するためには1年につき16,900円の登録料を特許庁に納付する必要があります。

 

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