新関連意匠制度Q&A
令和元年の「特許法等の一部を改正する法律」により、大幅に改正される関連意匠制度について、自分なりの考えをQ&A形式でまとめました。
改正法が施行されるのは令和2年の春になると思います。今年(令和元年)の弁理士試験を受験される方は混乱しますので、読まないようにして下さい。
新関連意匠制度の概要
新関連意匠制度は以下の2点を特徴としています。
- 本意匠の出願から10年以内であれば登録可
- 関連意匠にのみ類似する意匠であっても登録可
現行法では、関連意匠の出願は、本意匠の出願日以後、本意匠の意匠公報の発行の日前までに出願する必要がありますので、改正により出願可能期間がだいぶ長くなります。
また、現行法では関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けられないとしています(類似の無限連鎖の禁止)。
Q.本意匠が登録されて公報が発行された後に関連意匠の出願を行った場合、本意匠の公報について新規性喪失の例外の適用が受けられるのか?
A.例外適用は受けられません。自己が行った出願の公報掲載については新規性喪失の例外の適用が受けられないとする意匠法4条2項かっこ書は改正されません。
しかし、それでは本意匠の出願から10年もの間、関連意匠の出願を認める意味が無くなってしまいますので、改正後の10条2項には、公報掲載に限らず、本意匠と同一・類似の自己の意匠については、関連意匠の出願において新規性を喪失しなかったものとする規定が設けられています。
Q.10年以内ごとに出願を行えば、永久に関連意匠を連鎖させることができるのか?
A.できません。改正後の10条5項は、連鎖的に出願する関連意匠についても、最初に選択した一の本意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前までに出願する必要があるとされています。
Q.本意匠の意匠権が消滅していても関連意匠の登録を受けることができるのか?
A.できません。改正後の10条1項ただし書は、「ただし、当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは、この限りではない。」としています。
存続期間が満了するまでに意匠権が消滅する理由としては、このただし書にあるもの以外には無いと思いますので、本意匠が消滅している場合には関連意匠の登録を受けることはできないと考えています。
なお、意匠権の存続期間は、関連意匠制度の改正と共に、出願から25年に改正されます(改正後の21条)。現行法では登録から20年です。
Q.以下の事例において、各意匠の公報との関係における3条(新規性・創作容易性)と、各意匠の出願との関係における9条(先願主義)との関係で、各意匠は登録になるのか?登録になる場合、根拠条文は何か?
関連意匠二 ≒ 関連意匠ロ ≒ 本意匠イ ≒ 関連意匠ハ ≒ 関連意匠ホ
関連意匠ロ、ハ、ホ、二も互いに類似
本意匠イと関連意匠二、ホは非類似
A.いずれも登録になります。根拠条文は以下の通りです。
・本意匠イとの関係における関連意匠ロ、ハ
⇒ 改正後の10条1項、2項
・関連意匠ロとの関係における関連意匠二
・関連意匠ハとの関係における関連意匠ホ
⇒ 改正後の10条2項、4項
・関連意匠ロ、ハの互いの関係
・関連意匠二、ホの互いの関係
・関連意匠ロ、ホの互いの関係
・関連意匠ハ、二の互いの関係
⇒ 改正後の10条7項、8項
なお、関連意匠ロは関連意匠二の本意匠とみなされ、関連意匠ハは関連意匠ホの本意匠とみなされるため、本意匠が複数存在することになります。そこで、改正法では、最初に選択した本意匠のことを「基礎意匠」と呼んでいます。