米国で早期に特許を得る方法
ゲーム分野の特許について記載された記事ですが他の分野でも参考になると思います。
この記事によると、過去7年間のゲーム発明に関する米国特許出願において、平均係属時間は約27ヶ月であって許可率は約70%です。過去7年間に出願されたゲーム分野の特許出願の処理を迅速化するために最も頻繁に使用される方法は「トラック1(Track One)」プログラムです。
トラック1
トラック1の適用を受けるには、優先審査手数料(現在は出願人の規模に応じて1,000〜4,000ドル)を支払う必要があります。Track Oneは、係属中の特許出願についても利用可能です。
USPTOのトラック1の目的は、出願から1年以内に最終処分(つまり、許可、最終拒絶または放棄)することです。出願人は、最終拒絶の後であっても継続審査請求を提出することによって出願を係属することができますが、その後の処理は通常のものです。
PPH
過去7年間のゲーム分野の特許出願において、迅速化のために次によく使用される方法は「PPH」プログラムでした。
PMS
ゲーム分野の特許出願のための第3の方法は、特許出願の発明者の年齢または健康状態に基づく「特殊化を求める請願(Petition to Make Special)」(PMS)です。
PMSは、発明者が65歳以上であることを示す証拠、または、通常の手順で手続きを行った場合に発明者が手助けできないであろう健康状態を示す証拠とともに、現在係属中の米国特許出願についてUSPTOに提出します。
効果
ゲーム分野のすべての米国特許は、平均して、提出から米国特許としての発行までに26.7ヶ月を要しました。
Track Oneで処理された特許は平均10.3ヶ月早く発行され、発行から発行までの平均係属期間は16.4ヶ月でした。
PPHおよびPMSを介して処理された特許は、平均係属期間はそれぞれ18.3ヶ月および16.7ヶ月でした。
米国でマルチマルチクレームを禁止する根拠条文
米国で複数項従属クレームに従属する複数項従属クレーム(いわゆる「マルチマルチクレーム」)を禁止する根拠条文を確認しました。
35USC112
(e)Reference in Multiple Dependent Form.—
A claim in multiple dependent form shall contain a reference, in the alternative only, to more than one claim previously set forth and then specify a further limitation of the subject matter claimed. A multiple dependent claim shall not serve as a basis for any other multiple dependent claim. A multiple dependent claim shall be construed to incorporate by reference all the limitations of the particular claim in relation to which it is being considered.(参考訳)
(e) 多項従属形式における引用
多項従属形式のクレームは,先に記載された 2 以上のクレームを択一的にのみ引用し,それに続けて,クレームされている主題についての更なる限定を明示しなければならない。多項従属形式のクレームは,他の多項従属クレームの基礎とすることができない。多項従属形式のクレームは,引用により,それが関係していると考えられる特定のクレームのすべての限定事項を含んでいると解釈される。
以上です。
トランプ大統領の任期内の知財戦略が発表
トランプ大統領の任期内である2017~2019年の米国の知財戦略(US joint strategic plan on IP enforcement)が、2016年12月12日に公表されました。
https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/IPEC/2016jointstrategicplan.pdf
トランプ大統領の任期は2017年1月20日から2021年1月20日までですので、トランプ大統領の任期の中でも2020年の戦略はまだ出ていないことになります。
欧州の Poisonous Divisional に進展
欧州で特許出願を分割した場合に、優先権主張が認められる出願と認められない出願の間で自己衝突が生じるという「Poisonous Divisional」に進展があったようです。
日本では、先願と後願の間で出願人または発明者が同一の場合、特許法第29条の2が適用されず特許を受けることが可能であるのに対して、欧州では厳しい運用がされていたのですが、それが解消されるかもしれないということです。
浜松市、登録商標「直虎」に異議申し立て
浜松市と浜松商工会議所は、登録商標「直虎」について特許庁に異議申し立てを行ったそうです。
異議申し立てがされたのは下記の2つの商標登録のようですが、他にも「直虎」を含む商標について14の登録と12の出願があるので、今後も異議申し立てや審判請求が続くかもしれません。
登録番号 第5846107号
登録日 平成28年(2016)4月28日
出願番号 商願2015-83149
出願日 平成27年(2015)8月28日
先願権発生日 平成27年(2015)8月28日
存続期間満了日 平成38年(2026)4月28日
商標(検索用) 直虎
称呼(参考情報) ナオトラ
区分数 1
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
30 茶,せんべい,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ
【類似群コード】
29A01 30A01 32F06
登録番号 第5846295号
登録日 平成28年(2016)4月28日
出願番号 商願2015-118217
出願日 平成27年(2015)12月2日
先願権発生日 平成27年(2015)12月2日
存続期間満了日 平成38年(2026)4月28日
商標(検索用) 直虎
標準文字商標
称呼(参考情報) ナオトラ
区分数 1
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
30 みそ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類
【類似群コード】
31A01 31A02 31A03 31A04 31A05 31B01 31D01 32F03 32F14 33A01 33A03
商品・役務の別表の改正と類似・商品役務審査基準の改定
商品・役務の区分を定める商標法施行規則の別表が改正されます。改正された別表は平成29年1月1日(日)以降の出願に適用されます。また、これに伴い、類似商品・役務審査基準も改定されます。
この改正では①「国際分類の改訂に伴う改正」と②「商取引の実情の変化等に伴う改正」があります。
特許庁のホームページでは、②「商取引の実情の変化等に伴う改正」の例として、第11類の「懐炉灰」が削除されるとあります。
「懐炉灰」って・・・何?
ということで調べてみました。
「懐炉灰」とは、火をつけて懐炉(カイロ)に入れる固形燃料のことだそうで、「カイロバイ」と読むそうです。燃料なのに「灰」と呼ぶとは驚きです。使い捨てカイロはこの時期によくお世話になっていますが、使い捨てでないカイロがあるとは考えたこともありませんでした。
その他、改正について詳しくは下記リンクをご覧下さい。このWEBページでは改正箇所の例として少ししか挙がっていませんが、ページの下の方にあるリンクから新旧対照表を見ると多くの部分で改正がされることが分かります。
類似商品・役務審査基準の改定はこちら。
米国弁護士、特許権侵害でBMWを訴える?
米国最高裁、消尽に関する再審理を決定
Stupid Patent of the Month
電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)が発表した11月の「Stupid Patent of the Month(今月のばかげた特許)」がこれです。
サーバーにコンテンツを格納して配信する方法のようです。同財団によると、1990年代半ばであれば幾分新鮮なアイデアだったが、この特許出願は2011年に出願されているとのことです。ひどい言われようですね。
もし自分が担当した特許がStupid Patent of the Monthに選ばれたら嫌だろうなと思っていましたが、よく考えたら弁理士としては腕が良いということになるのかもしれませんね。Stupid Patent Attorney of the Monthにならないように頑張ります。
対ドローンの新兵器「ドローンガン」がカッコいい!
違法ドローン対策の新兵器、その名も「ドローンガン(DroneGun)」。
ごっついライフルのような見た目からドローンを派手に打ち落とすのかと思いきや、ドローンを操縦不能にして、優しく着陸させます。2km以内の距離にあるドローンに適用可能とのこと。
ドローンガンを製造するドローンシールド(DroneShield)社は、ドローン防衛以外にも、移動電話通信、ネットワーキングなどの分野で13の特許と22の特許出願を有しているそうです。(一応、知財のことも書いておきます。)
最近の人気記事ベスト10(知財学習帳)
欧州の参戦で、特許訴訟の中心は米欧中の三つ巴に?
2016年11月7日、ウォールストリートジャーナルは、中国が特許訴訟を提起する場として魅力的になっていることを伝えました。
その理由として、中国の特許訴訟の手続きがスピーディーになり、コストも安価で、中国で侵害が認められれば、中国国内の製品に適用されるだけでなく、中国で製造した物の輸出にも適用されるため、原告はライセンスの交渉ツールが得られることを挙げています。
これにより、特許訴訟の比重は、現在、特許訴訟の中心となっている米国から中国に移るものと考えていました。
ところが、2016年11月28日、英国が欧州統一裁判所協定に批准する計画を進めることを発表しました。
これにより、欧州統一裁判所が近く実現するとなると、特許訴訟の場の選択肢には欧州統一裁判所も入ってきます。
欧州は、コスト的には中国に及ばないかもしれませんが、市場規模やグローバル企業が多いことを考えると魅力的な戦場となるでしょう。
これにより、今後の特許訴訟の中心は米国、中国、欧州になると考えられます。
(日本が入っていないのが寂しいですね。日本も東南アジアを巻き込む等してここに食い込めるとよいのですが。)
国際出願関係手数料が改訂
スワロフスキーの偽物、年間15兆円超え!?
WIPR(World Intellectural Property Review)によると 、宝飾品を販売するスワロフスキーは、インターネット上で偽造品を販売する業者を被告として、商標権侵害訴訟を米国で提起したとのことです。
原告は、被告が運営するようなウェブサイトは年間数千万の訪問者があり、
年間15兆円(1,350億ドル)を超える売上があると推定しています。
年間15兆円というのは、にわかには信じがたい数字ですね。調べたところ、本田技研工業の売り上げと同じくらいです。
仮に年間3000万人がウェブサイトを訪問したとして、一人当たり50万円の売上があることになります。やっぱりおかしいですよね。
私の計算が間違えているのでしょうか。